菊池史子「忘れない歌」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017で上映されます

3月5日、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017「ゆうばりシネマテーク」プログラムで、昨秋に清水沢コミュニティゲートで滞在制作を行った菊池史子さんの4校分の作品が、上映されることになりました。

 

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017

映画人の”故郷”としてのゆうばり。映画人と映画ファンが集う日本初のリゾート型映画祭。1990年より北海道タ張市で誕生した映画祭は、特別招待作品、国際コンペティション、オマージュ上映、特別企画など、ハリウッド大作から邦画、インディーズ作品まで幅広く上映作品が集められ、日本国内でも有数の歴史ある映画祭のひとつに数えられます。

南部小学校・丁未小学校・夕張小学校・清水沢小学校の4つの映像作品の上映と、ドイツにいる菊池さんとインターネットで結んで、トーク&オープンセッションを予定しています。
(ドイツは朝の6時だそうです…!)

このたび上映に寄せて、菊池さんからメッセージを預かりました。
彼女の思いを受け取ってください。

 

夢を見る

今回幸運にもゆうばり国際ファンタスティック映画祭で去年滞在し制作した4本のビデオを上映させていただくことになりました。
この作品は夕張市内にあった28校の小学校をテーマにしていて、まだ24校分が未完成です。
今回、7人の素晴らしい意志を持った方々が撮影に参加してくれました。
彼らが残してくれた様々な物語は当時の小学校生活や夕張の姿を映し出してくれます。
カメラの前に立って話すこと、その上、歌(校歌)を歌うことは決して容易なことではなかったと思います。
全ての人ができるわけではありません。
彼らの記憶を残す、伝えると言う強い意志が前に進む力となったのです。

充分に発達した現代では、記憶や歴史を保存する方法や選択肢は沢山ありますが、それを実際に保存しようと思う人や世界に届けるメッセンジャー(使者/配達人)がいつもいるとは限りません。
メッセンジャーは時によって音楽家かもしれないし、政治家かもしれません。
私は作家という比較的中性的な立場から世界へ届けようと思います。そうです。世界へ届けようと思っています。
またまた、大きいこと言って!突拍子もない!と思われるかもしれませんが、私はそんな夢を持って、その夢を信じ、制作を進めています。
その夢が現在にある未来となり制作を進める動機になっているのかもしれません。

2011年作家の村上春樹氏がカタルーニャ国際賞にて受賞スピーチの最後にこう言いました。

我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んで行く「非現実な夢想家」でなくてはならないのです。人はいつか死んで、消えていきます。しかしヒューマニティーは残ります。それはいつまでも受け継がれていくものです。我々はまず、その力を信じるものでなくてはなりません。

諸行無常。小学校の建物はほとんどが壊され、町にかつてあった風景がたくさん失われていました。
しかし、私は目に見えるものはたとえなくなったとしてもそこで培った精神はいつまでも個の中にあり続けるものだと思っています。
ヒューマニティー。
夕張には素晴らしいヒューマニティーがあります。それは私が滞在中、特に感じていたことです。そのヒューマニティーは炭鉱町独特のものなのかもしれません。このヒューマニティーがなくならない限り、夕張は夕張であり続けることができると思っています。
私はそのヒューマニティーを恋しく思い、またそこに帰りたいな。と心を引き寄せられます。

 

この滞在制作に関わってくださった全ての方に心から感謝しています。特に、清水沢プロジェクトの佐藤真奈美さんには毎日のように一緒に活動してもらいました。
そして、メッセージを残してくれた安部秀一さん(丁未小学校)上木秀子さん、櫻井暁さん(清水沢小学校)櫻井亮さん(南部小学校)菅原直子さん、菅原もと代さん、須藤伸也さん(夕張小学校)の強い意志に尊敬の念をもって感謝します。

 

2017年3月1日 夕張に私のやり方で関われることができる幸せをかみしめながら
ブラウンシュヴァイクにて

菊池史子

 

「忘れない歌」上映概要

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017 スペシャルプログラム
「ゆうばりシネマテーク」

日時

2017年3月5日(日)14:00〜15:30

場所

ゆうばりホテルシューパロ1階 ライムライト

内容

映像作品の上映(36分44秒)と、作家菊池史子・コーディネーター佐藤真奈美(清水沢プロジェクト)・会場の皆さんによるトーク&オープンセッション