丸山純子・清水沢滞在レポート

1/30〜2/3 滞在制作。

雪が降り積もっていた。清水沢コミュニティーゲート周辺は、どこを見ても、真っ白。幻想的だった。

かつて旧北炭火力発電所で働いていた方々2名に当時働いていた思い出話を聞いた。堅苦しくない話をお願いしようと思ったら、お願いする前からずっと面白いエピソードが続いた。

作品素材の食用廃油をほしいがため、天ぷらそばを作り、みんなで食す。
佐藤さんのとり天が、美味しかった。

5/21〜5/30滞在制作。

前回の滞在の時は、真っ白だったが、今回は、真緑。新緑の候とは、まさにこの時期という感じだ。季節ごとの様変わりの様子に、夕張の方の情緒の深さに想いを馳せる。それから、とにもかくにも、旧北炭清水沢火力発電所をまずは視察。雨漏りのこと、風のこと、展示内容、色々不安が募る。まずは、掃除ということで、長年積もったチリや瓦礫を恐る恐る片付け始める。これは埒が開かないということで、急遽作業員増員して、掃除をする。埃とり、ガラス拾い、ゴミ捨て、掃き掃除、、、。鼻の周り真っ黒。炭鉱マンと同じ顔。それから、それからブロワーでブワーってホコリを散らす作戦になる。ブロワーを探していたら、永井組の方が、ブロワーを背負って、半日清掃に付き合ってくださった。

ドロドロの埃はもちろん、会場に生えていた苔や、天井の破片など、ブワーっと一気に外に排出。あとは、配電盤や窓ガラス、扉などのホコリを吹いていただいて、掃除は終了。

設営に取り掛かる。試しに1Fのエントランスのフロアーに穴を開けてみる。堅すぎて、びくともしない。コンクリートは時が経てば経つほど硬くなると、初めて知った。築99年だもんね。そりゃ石のように硬いわけだ。急遽プランを変え、1Fは別の方法を編み出す。2Fは、なんとかうまくいった。ほっとした。ほっとしたのは束の間、このスピードで作業すると、設営時間がどう考えても足りない。作業員をまたしても増員してもらう。そして、設営に協力してくださった方々にそれぞれ機材を持ってきてもらったため、作業効率が格段に上がる。

それにしても、何本のキリを折ってしまったことだろう。近隣のホームセンターのキリは買い占めた。みんな筋肉痛になりながら作業してくださったおかげで、無事設営が終了。

掃除から設営まで、手伝ってくださった皆様、誠にありがとうございました!!!!!

5/25 「時のあわい旧北炭清水沢火力発電所をめぐるシンポジウム&ワークショップ」

場所:夕張市拠点複合施設りすた多目的ホール
第1部 私と他者のあわい (丸山純子、大友恵理、佐藤真奈美)
第2部 過去と未来のあわい ( 伊藤保則、山口一樹、佐藤真奈美)
第3部 花づくりのワークショップ

 

写真を見ながらきく伊藤さんの話からは、当時の様子が色鮮やかに伝わってきた。

花づくりのワークショップは、黙々とみんな作業されていた。最終的にはそれぞれの個性が煌めく作品が出来上がった。

5/31〜6/14 「時のあわい」旧北炭清水沢火力発電所100年のアート事業 展覧会実施。

完全予約制1日3回、所要時間1時間の鑑賞ツアーを行う。

鑑賞ツアーでは、佐藤さんが建物の解説をし、私は、作品の解説を行った。普段作品の解説をすることが少ない私は、特に最初の方は無口だったに違いない。回を重ねるごとに、何をどう話したら良いかコツを掴んで行った。最後の方は、佐藤さんと阿吽の呼吸で、解説ができるようになっていた。

毎回鑑賞ツアーを実施したことにより、鑑賞者と直接話す機会を持てたことは、素敵な体験だった。昔、発電所で働いた方のお話、自分もアーティスやものづくりの活動をしている方達のお話は、刺激的だった。鑑賞ツアーの終盤、目に涙を溜めている方もいた。美術や建築系の学生さんたちのツアーは、鋭い観察力と、好奇心に溢れていた。来年、100周年を迎える旧北炭清水沢火力発電所。今度は、どのような方達が集い、どのようなダイナミズムが生まれるのだろう。どんな方の心にどんな灯火が灯るのだろう。期待感でいっぱいだ。

  

鑑賞ツアーの一番の思い出は、休憩中に作る賄い作り。普段、とても狭い台所で一人で作って食べているものにとって、毎日スタッフの皆さんに何を食べてもらおうかと考え、一緒に食べることができることが楽しかった。私の知り合いは、私が夕張で花嫁修行をしていると思ったくらい、料理を作った。少しでも腕は上がったのだろうか。

また、ツアー後に入るお風呂も楽しみの一つだった。大きなお風呂に浸かり、汗を流す日課は最高だ。しかし、通っていたお風呂が改装工事を行うということで、近所にお住まいのSさんのお宅のお風呂をお借りすることになった。結局Sさんのお宅では、お風呂をいただくだけでなく、夕飯までご馳走になった。毎回、手の込んだ料理をたらふくご馳走になった。有難いことこの上ない。

 

清水沢での滞在では、インタビュー、制作、設営、シンポジウム、鑑賞ツアー運営、様々な場面で、非常に多くの方に協力していただいた。佐藤さんが、長年積み重ねてきた人脈におんぶに抱っこだったが、束の間の旅人に、差し入れしてくださったり、協力の手を差し伸べてくださったり、暖かく接してくださり、本当に感謝しか言いようがない。

せめてものお礼ということで、打ち上げパーティーを最終日に行った。揚げ物で始まり、揚げ物で終わる、ということで、唐揚げを用意した。年齢や出身、バックグラウンドなど違う人々がこの展示を通して出会い、集えたこと、素敵な時間だった。そして、なんと、サプライズで、寄せ書きと展示期間中のダイジェスト画像を編集した動画のプレゼントをいただいた。涙。私にとってミヒャエルエンデのモモという本が私の美術家としての基本となっているのだが、清水沢コミュニティーゲートでの集いや出来事は、この、モモに出てくるシーンと重なる場面の連続だった。このような時間が美術の基本なのだと、つくづく思う。清水沢で出会った皆様、美術をやっていて良かったと思える時間を本当にありがとうございました。

  

(文・写真/丸山純子)

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