駅前食堂のはなし-桑原真理子活動日誌


なかなか入りづらい駅前食堂のドアを勢いよく開けると、店の中でタバコをプカプカ吹いていたご主人が快く迎え入れてくれた。店中には3つの石炭の置物があった。

シューパロ湖と彫ってある石炭は奥さんの親戚から遺品としてもらったそうだ。「遺品が石炭って面白いですね」と言ったら、「お金の方がいいよね」と奥さんが笑って答えた。

「なぜ夕張の人は石炭の置物を飾るのですか」と聞いたら、「こけしと同じで飾り物として作られているから置くの」とご主人が答えた。「でもこけしは元々燃料ではないですよね」と言ったら、ご主人が大きな声で笑った。

途中で40代くらいの解体業を行う作業員二人組みがランチに来た。石炭の置物を飾っているか聞いたところ、 「いつも仕事でいっぱい投げてる(捨ててる)」と答えた。

今度石炭の置物を見つけたら捨てないで駅前食堂に持ってきてくれるように頼んだ。

店を出る前に奥さんが自宅からまん丸い石炭の置物をふたつ持って来てくれた。石炭とは思えない。まるでプラスチックのようだ。とても美しいと思った。「本当に持って帰ってもいいんですか?」と聞くと、「いいよ」と言われた。

「日本に住んでいたら店をたたむ時に(石炭の置物を)全部送るのになー、外国じゃ難しいな」とご主人が笑いながら言った。

(文章・写真/桑原真理子)