取材協力を行った「郷愁の丘ロマントピア」公演中です

東京の「こまばアゴラ劇場」で、1月11日から21日まで、劇団青年団リンク ホエイによる「郷愁の丘ロマントピア」が公演中です。

青年団リンクホエイ

山田百次(作・演出)、河村竜也(プロデュース)

舞台は現代の大夕張。80代、90代の元炭鉱マンたちが過去と現在を行き来し語られる自分たちの人生と、まちの歴史の重なり合いが物語の軸です。

「夕張では、私実の積み重ねが史実になる」と私はいつも思っているのですが、この物語に出てくる大夕張で生きてきたふつうの男たちの人生は、まさにまちの歴史そのもの。事故もダムも語られますが、「このまちにはこういう悲しい物語がありました」という内容ではありません。東京のど真ん中の劇場で「大夕張」の名が何度も叫ばれ、私たちが生きる未来への問いが投げかけられます。

清水沢プロジェクトは、7月にプロデューサーの河村竜也さん、9月に本作の作者で主演の山田百次さんのリサーチをお手伝いしました。
当初別のテーマを考えていた河村さん。すでにかなりのリサーチをされた上での夕張入りでしたが、実際に見たシューパロ湖の景観に衝撃を受け、大夕張をテーマとすることになりました。

山田さんは3日間清水沢コミュニティゲートに滞在し、夕張の人たちにインタビューしたり資料を集めたりしました。
実は、現地で元炭鉱マンには出会わなかったのです。そのあたりが「80代以上で残ってるのはもうこの4人しかいない」という、夕張にあっても大夕張が遠くなりつつあるというリアリティある設定にも表れています。私も含めたよそ者たちは、何人かの出身者の方と出会うなかで、彼らの話と今現実に目の前に見える風景との乖離を強く感じたものでした。私たちに見えないものが、そこにある、と。

過去の作品と違って、経験者がまだたくさんいるテーマを扱うことはとても緊張する、と河村さん。「まちを弔う」というキャッチコピーはややドキッとしますが、これは私が、過去にご案内したある方が南部青葉町の倒壊した商店街を見て、「このまちには葬式が必要だと思う」とつぶやいた、と紹介したことが、原点となったそうです。
「弔い」は決して忌むべき行為ではなく、生きた証を尊厳あるものとして大切に扱うことであり、残されたものが永遠に心に留め、前を向いて歩んでいくことだと思います。彼らは非当事者を自覚しながらも、演劇という表現を通じて、当事者の気持ちを深く掘り下げ、大夕張というまちとひたすらに向き合うことに挑戦しました。

東京のお客さんは、大夕張というまちから何を受け取るのか。また、東京にいる大夕張や夕張出身者の方にも、ぜひ見ていただければと思います。

劇団青年団リンク ホエイ「郷愁の丘ロマントピア」

作・演出:山田百次(ホエイ|劇団野の上)

出演:河村竜也(ホエイ|青年団) 長野 海(青年団) 石川彰子(青年団) 斉藤祐一(文学座) 武谷公雄 松本 亮 山田百次(ホエイ|劇団野の上)

照明:黒太剛亮(黒猿) 衣裳:正金 彩 演出助手:楠本楓心 制作:赤刎千久子
プロデュース・宣伝美術:河村竜也

2018年1月11日(木)−1月21日(日)こまばアゴラ劇場