菊池史子滞在制作日誌|6月9日(金)

午前中は色々なところに挨拶を済ませ、午後は小学校へ向かった。
「最後の展覧会をうちの体育館でやったらどうですか?」と鹿の谷小学校卒業の有村校長先生からありがたい提案をしていただく。

今夜は大変嬉しいことに、清陵小学校の卒業生と清陵町にあるスナック“男酌“で撮影することになっている。
最後の卒業生2名と当時2年生だった1名の計3名。
当時の様子を聞くと街の賑やかさや人の温かさがとても伝わってくる。

撮影の後にまだ遠幌小学校の卒業生を探していると伝えると、参加者の信子さんが階段を降りて行った、と思いきや、下のバロンで働いていた孝子さんを連れてきてくれた。
なんと彼女が遠幌小学校出身だった。
「遠幌はねーすごいいいところだったの。今でも懐かしくて、校舎のあったところに行きたいけど、熊笹が生えてて先に行けないもんね。」
遠幌地区は三菱炭鉱と北炭の分岐点でもあり、炭鉱の家族で賑わっていた。
「近所のおじさんがね、なんか食べてけーって夜ご飯食べさせてくれるの。昔は家に鍵とかかけてないから人の家も自分の家みたいに勝手に上がっていってたんだよ。」

清陵町と遠幌地区は場所や時代は違うけれど、意見が一致する場面がたくさんあった。
最後に出演者の高橋さんが取材の最後に「自分の子供にあの頃の清陵町を見せてあげたかった。」という一言が、当時の素晴らしさを表していた。

明日は2件の撮影が入っている。
それが終われば28校分の素材が揃ったことになる。
2016年から始まったこのプロジェクトは今回の滞在が5回目。
今では街のあちこちに私たちを気にしてくれる仲間たちがいる。
急に尋ねても「入りな、入りな!」と迎えてくれる場所がたくさんある。
プロジェクトのゴールが見えたとき、寂しさを覚えたのは私がここで出会った人たちの温かさを知っているからである。

(文・写真/菊池史子)